2015年9月22日火曜日

'15.09.20 一実さん創作人形展「洞熊学校を卒業した三人」を見に行く

「別館」記事にするか迷いましたが,こちらに書きます。

作品写真は,うっかりしてお断りをする前に撮影していまいましたが(今後,気をつけますm(_ _)m)
作家の一実さんと美術館さんにお願いして,ご厚意でここへの掲載許可をいただきました。
加工・転載は一切できませんので,ご了解願います。


「人形」が幅広く好きです。
古代のものから民芸品,アンドロイド(人形か?),当然,球体関節人形も…。
いろいろな人形を見るのは楽しいです。

ところが,webでこの作家さんの人形を初めて見たとき,久々に驚きました。

「秋保の杜佐々木美術館&人形館」で,それらの人形も含めての企画展が開かれていると知って,9月20日に出かけました。(人形館は2度目の訪問です)

初めて写真を見たときに,
「人形が何かを語っている」という印象を受けましたが,
実際に会ってみると,一人一人の人形が,それぞれに言葉を発したり音を奏でたりしているように感じます。

けれども,耳を傾けても言葉も音楽も聞き取れません。
それはきっと,人形たちが話しかけたい相手を選んでいるからでしょう…。
(私の耳元ではその後「なまねこ,なまねこ…」と声がするようになったけど…笑)

河北美術展入選作品(写真はなしです)の題名は「あなたにしか云えないこと」。
人形の思いを語れる作家さんならではと思います。

個展では「洞熊学校…」のほかに
「銀河鉄道の夜」や「注文の多い料理店」をテーマにした作品も展示されています。
「銀河鉄道…」モチーフの作品は,どれも透明なベール(又三郎的にいえばガラスのマント?)をまとっている雰囲気があって,これもまた好きでした。

ほかにも,たくさんの作品が展示されています。
(「洞熊学校…」は書くとネタばれになりそうなのでパスします…)
人形一人一人の上に描かれた歌もいいです。

視覚以外のいろいろな感覚をゆさぶってくる人形に会ったのは,初めてかもしれません。
すっかり「人形の世界」を堪能しました…。


この日は作家の一実さんの実演&トークもありました。
(人形を生む方の呼び名は,「アーティスト」や「芸術家」よりも,「作家」のほうがしっくりする気がします…個人的に。)

一実さんが繰る石塑粘土の造形実演に魅入ってしまいました。
目の前で口や鼻の造形が生まれていくのにはひきこまれます。
手の爪と指の境界まで入れていて,見事です。

トークもとても面白かったです。
人形の作り方を聞くのは初めてでした。
より合わせる前の糸の繊維を染めて髪の毛を作ったり,
重なって見えなくなる手のひらのしわや色づけまでしているのには驚きでした。
服に隠れる腕の静脈まで描くそうです。
目はガラスのものを使用し,トンボ玉の作者のものも使っているそうです。
衣装や靴も小物も手作り。
作品「鳥獲り」の袋の中には,本物の鶏の骨が入っているそうです。
また,人形に本物の化粧品を使うかどうかの話題も初めて聞きました。

佐々木美術館の館長さんとのやりとりや,
隣に座った(緊張してしまった…)佐々木正芳先生の話の一つ一つも,
とても興味深く,いちいち「なるほど…」でした。

「人形を作っていて,どこでキャラクターが決まるか」という話題もありました。
その瞬間は作者だけが味わえるものと思うと,うらやましくなります。

「個性の強い人形は,劇で操りにくい」との話題もありましたが,
個展にいるのは,傀儡とは違って,一人一人個性を持った人形たちでした。

一実さんは独学で人形を作り始めて10年だそうです。
独学でここまできただけに,しっかりした芯のある方ですが,話を聴いてる一人一人にも暖かく心配りのできる方にも感じました。
そんなお人柄なのだから,一人一人の人形たちに宿るもの・惹きつけるものがあるのだと思います。

↓一実さんのサイト「Rainy Sugar」はこちらです。
http://rainysugar.web.fc2.com/index.html


展示は9月27日まで。
秋保の杜佐々木美術館&人形館にて。
お勧めです!
(メインテーマの「洞熊学校を卒業した三人」は,ぜひ原作を読んでいくことをお勧めします。青空文庫でも読めます)





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今回のおまけ…いえ,【蛇足】です。

トークの最中に
「人形と彫刻の違いは何か?」
という質問がありました。

去年講演で来仙した四谷シモンさんも質問されて困ったそうです。
「なぜそんな区別をしなければいけないのか…」に困ったのかもしれませんが…(汗
ただし,言葉遊びとしては面白いテーマだと思います。

あくまでも私見です。
人形と彫刻の技法論は,全くわかりませんが,
「人形」は「ひとがた(人形)」であったときからそのアイデンティティは変わっていないのだろうと思っています。
「依代」「憑依」「精霊」など,様々な言葉がありますが,「宿るもの」があると思われているのが,人形の本質だと私は思います。
プリミティブなアニミズムを,今の時代まで内面に宿し続けているのが,私にとっての人形の魅力です。

なので,
彫刻は静的←→人形は動的(あくまで私見)
彫刻は犬的←→人形は猫的(あくまで私見)
彫刻は祈り←→人形は畏れ(あくまで私見)
彫刻は寡黙←→人形は時に多弁(あくまで私見)
etc…。
(あくまで私見)なので,突っ込まれると困りますが…(^^ゞ


【蛇足】の余談になりますが,仕事の先輩から聞いた話。

佐藤忠良さんの彫刻を,目が見えない子どもたちが触ろうとしたときの話です。
職員が止めようとしたら,居合わせた忠良さんが,
「いいんだ,いいんだ。彫刻は触ってもらうと喜ぶんだ。」
と言ったそうです。

人形は,嫌がります…。
悪い意味でなく,そういう存在です。きっと…(笑

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